29日、政府・与党では、これまで検討を重ねてきました「安心実現のための緊急総合対策」を決定しました。この緊急経済対策は、原油・食料高騰や世界的な経済の減速による最近の景気停滞に対処するため、7月から政府・与党において対策を検討してきた結果をまとめたものです。
この対策は、世界的な経済環境の変化の中で、改革を通じた経済成長を実現する経済政策の基本方針を加速させるとともに、原油・原材料の急激な価格上昇による中小企業や国民生活への打撃に対処するため、緊急性や政策効果の高い施策を中心にとりまとめられました。対策では、1.生活者の不安の解消、 2.「持続可能社会」への変革加速、 3.新価格体系への移行と成長力強化、の3つの目標の実現に資する施策が盛り込まれています。事業規模は、早急に実施する施策に関して11.5兆円で、そのうち国費は1.8兆円となる見込みです。
所得税等の定額減税で生活支援、消費下支え
この対策の中には、私がかねてから提唱してきた中・低所得者の生活を支援するための所得税等の定額減税を平成20年度中に実施するとともに、減税の恩恵を受けることができない低所得者に対して臨時特例給付金の支給が盛り込まれました。これらの規模や実施方式については、年末の税制改正論議の中で具体化して、来年の早い時期からスタートすることとなっています。原油、食料など必需品を中心とした急激な価格上昇は家計・企業に広く深刻な影響が及んでおり、その結果、選択的な消費が減少しはじめています。実質的な可処分所得が目減りする中で、国民生活の6割を占める消費を下支えすることのよって景気後退の悪循環に陥ることを防ぐことになると考えます。
中小企業の資金繰り支援を強化
多くの中小企業においては、急激な原材料の価格高騰に適応することができず、経営が悪化しています。そのため、 1.地域金融機関を中心に中小企業の経営実態を十分考慮した融資の円滑化、 2.原材料価格高騰対応緊急保証の導入、 3.政策金融機関によるセーフティーネット貸付の拡大や返済猶予への対応等などの対策を早急に講じることにより、資金調達を支援します。
また、下請事業者の相談体制の充実や「下請法」の運用強化などにより下請事業者の保護を強化します。さらに、トラック運送業、バス・タクシー運送業、クリーニング業など燃料負担の大きい業種に対する省エネ化などへの支援を強化します。
農林水産業に対しては、省エネ設備・技術導入を支援するほか、国産農林水産物の需要喚起や“地産地消”を進める施策を実施します。
○ 緊急総合経済対策の主な項目
「対策」の目次とその中に含まれている主要事項は以下のとおりです。
詳しくは、内閣府のホームページをご参照ください。
第1の目標 生活者の不安の解消
国直轄分道路関係経費3,700億円について、以下の対策を講じることにより、540~740億円(15~20%)の削減を実施すること。
1.生活雇用支援対策
- 物価に対する総合対策
- 特別減税等
- 消費者政策の抜本強化(消費者行政の一元化や相談体制の強化等)
- 非正規雇用対策等の推進(労働者派遣制度の見直し、女性・高齢者の就労支援等)
2.医療・年金・介護強化対策
- 医療の安心確保(長寿医療制度の負担軽減、地域医療の確保等)
- 年金記録問題への対応
- 介護サービスの確保(介護人材の確保・定着、認知症対策等)
3.子育て・教育支援対策
- 出産・子育て支援(新待機児童ゼロ作戦の集中・重点実施等)
- 教育支援(学校給食の保護者負担の軽減)
第2の目標 「持続可能社会」への変革加速
1.低炭素社会実現対策
- 省エネ・新エネ技術の抜本導入促進(家庭・企業等への太陽光発電設備の導入等)
- 省エネ・新エネ技術の開発促進
- 資源価格上昇に対する国際協力の強化等
2.住まい・防災刷新対策
- 住まいとまちの再設計(省エネ長寿住宅の振興、住宅ローン減税の延長等)
- 児童を地震から守る学校づくり等防災対策
3.強い農林水産業創出対策(省エネ設備・技術の導入促進、企業型経営の拡大、国産農林水産物の需要喚起、農商工連携による新たな市場の創出等)
第3の目標 新価格体系への移行と成長力強化
1.小企業等活力向上対策
- 中小零細企業等への支援(資金繰り対策の拡充、下請事業者の保護の強化、燃料負担の大きい業種支援の強化等)
- 生産性向上等による成長力強化(IT化の推進、海外からの高度人材の受け入れ等)
2.地方公共団体に対する配慮