民間の活力を引き出す経済成長が必要

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政府・与党、野党とも参議院選挙を視野に入れて経済成長戦略の策定に取り組んでいます。1990年代以降、日本経済は平均すると先進諸国の中で低い成長率が続いてきました。その結果、不安定な雇用状況から新たな貧困や格差問題が発生し、所得の伸び悩みは高齢化の進行と相まって社会保障制度の動揺を招いています。日本が直面している問題を改善し、安心できる未来を築いてくためには、停滞している経済を再生させて長期的に安定した成長を達成していくことが必要条件です。日本を取り巻く国際情勢は、グローバル化やアジア新興国の目覚しい経済成長にともない大きく変貌しています。変化に的確に対応して、日本の経済社会の特長を活かした新たな経済・産業の体系の確立をめざして、政・官・業が問題意識を共有して協力していくことが必要になっています。

 

ソフト・ハード融合のシステムに成長を期待

日本のものづくりのハード技術は依然として世界最高水準にあります。しかし、優れたハードを活かすソフトを組合せて新たなシステムを創る構想力では残念ながら後れをとっている感は否めません。例えば、米アップル社のiPadはコンテンツを含めた新しいシステムを創り出すことによって情報通信の世界を変えて、大きな価値を生み出しています。そこに使われているハードの多くはメイド・イン・ジャパンだと言われています。また、建設機械や工作機械と情報通信技術を組合せることにより新たな市場が拡大しつつあります。

日本経済は成熟段階に入っています。今後は得意とするハード技術の付加価値を高めていくためにソフト技術と融合した技術革新に力を注いでいくことが重要です。

 

サービス産業の競争力強化も重要な課題

成熟経済の雇用や生産を支えるのは、効率的で高度な金融をはじめとするサービス産業だと考えます。日本は成長力の高いアジアに位置している特長を活かして、新興国などで需要が高まっている高度サービスを提供するだけでなく、日本独特の質の高いサービスのノウハウを供与することによって多様なビジネス・チャンスが生まれるのではないでしょうか。また、日本は、建設や設備でも高度な技術を持っていますが、これから新興国などでインフラ整備が加速度的に進むものと考えられるので、ポテンシャルは高いと思います。

 

政府は民間の活力を引き出す条件整備を

政府が、特定の分野への補助金や政策減税を行っても意図どおりの成果が上がることは稀でした。むしろ助成要件や事務手続きが煩雑で、新たな革新の可能性を閉ざしてしまう傾向すらありました。官主導の経済成長には多くを期待できず、あくまで民間主導であるべきです。政府の役割は、国の内外からの資金供給の拡大や研究開発を促すような規制や税制の見直し、情報提供体制やインフラ整備といった民間の経済活動を活性化させる条件整備に限るべきだと考えています。特に、新たなイノベーションは中小企業から生まれる場合が多くあります。中小企業のアイデアや技術がビジネスに結びつくような条件整備が重要ではないでしょうか。