経済成長力の向上と所得再配分機能の強化をめざす政策が必要

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国会で迷走がつづく内閣・与党

先週、内閣・与党は野党などの反対を封殺して衆院で来年度予算案を可決しましたが、執行の前提となる「国債特例法案」などの関連法案成立の目途はまったく立っていません。民主党の参院議長すら予算案と関連法案を分離するチグハグな方針を批判して、一時は予算案の受取りに難色を示したほどです。迷走しつづける内閣・与党には、政権を担っている責任感の欠片も感じられません。無責任極まる菅内閣は即刻退陣するべきです。

 

経済成長と所得再配分の総合ビジョンを明確に

菅内閣は、「税と社会保障の一体改革」を最重要課題に位置付けて、閣僚や有識者を交えた集中検討を行っていますが、その前に「経済成長と所得再配分の総合ビジョン」を明確にしておくことが必要です。長期的に安定した社会保障制度を確立することは最優先課題であり、そのためには増税を含めた歳入に関する議論は避けて通れないことは理解します。しかし、税制と社会保障制度はいずれも”所得再配分”の手段であって、そもそも再配分をどのようにするのかのビジョンがその前提として必要です。また、再配分する”富”をできるだけ大きくすることも重要であり、そのためには経済成長を高めていく政策方針を明らかにしていくことが必要だと考えます。

根本的な議論抜きに小手先で制度改正の検討を進めても財源不足を補うために逆進性のある消費税増税だけに終わってしまいそうです。結果として、将来の成長力が削がれて国力が衰退する一方で社会保障制度も安心できるものにはなりません。今日の日本は経済・社会の基本的な制度の骨格まで踏み込んだ改革を必要としているのではないでしょうか。

 

所得再配分効果が低い日本の政策

今日、”格差”や”貧困”の問題への関心も高まっています。景気低迷等によって就職がうまくいかなかったために、その後も不安定で低賃金の仕事にしか就けない事態が深刻です。現役世代、特に若年層の”貧困”問題の解消と連鎖の防止への取り組みが急務です。

日本では、当初所得のジニ係数(*)は先進諸国の中でも低い方で平等な社会と言えます。しかし、税や社会保障政策による再配分後のジニ係数は米英豪などに次いで、ほとんどのEU諸国よりも不平等になっています。しかも、再配分効果は米英に比べても低く、政策による不平等の改善の度合いが小さいのが実態です。

 

問題に的確に対応したポリシー・ミックスが必要

将来の政策の基本的な方向を考えるときには、現役世代を中心とした所得再配分機能を強化していく視点が不可欠と考えます。そのため、所得税や社会保険料における累進性の強化、失業保険や”負の所得税”等の低所得労働者に対する給付の増額、子どもの教育機会の平等を確保するための教育費支援などが必要だと考えます。一方で、経済活動については原則自由で、市場メカニズムを活用したものとする方が効率的です。過剰規制や補助金行政は、経済の成長力を阻害する危険性があり、導入・強化には慎重であるべきです。

問題の原因、達成すべき目的、施策の効果をよく見極めた上で、適切なポリシー・ミックスが必要であり、その前提として総合的なビジョンを明確にするのが先決だと考えます。

 

(*)ジニ係数…社会における所得分配の平等・不平等を計る指標。0から1までの数字で示され、0に近づくほど平等、1に近づくほど不平等で格差が大きいことを意味する。