総理が消費増税の影響検証を指示
安倍総理は、来年4月からの消費増税の経済に及ぼす影響を検証するよう関係閣僚に指示しました。景気動向などを見極めた上で秋までに最終判断を下すと表明しており、そのための材料とするものです。消費増税が景気にマイナスの影響を及ぼすのは明らかであり、そのため経済人・エコノミストだけでなく、政府関係者にも慎重論があるのは理解できることです。こうした懸念に対して、“感情論”だけで判断するのではなく、しっかりとした分析を行おうとする姿勢は評価します。
97年引上げ後に景気後退
1997年4月に消費増税後に景気が後退した事実があることから慎重論があるのは当然のことです。四半期実質GDP成長率(対前期比)は、97年1-3月期+1.3%とプラスがつづいていたものの、増税後の4-6月期には、駆込み需要の反動減などで▲2.0%とマイナスに転じました。7-9月期には一旦回復したものの、年末には山一、拓銀が破たんするなどその後長い不況のトンネルに突入しました。この景気後退の最大の原因は、97年夏のアジア通貨危機や緊縮型の財政政策への転換であり、消費税の影響は軽微であったとの評価もあります。私も、97年以降の景気後退には、消費税以外にさまざまな原因があったが、増税時期が重なったことの影響は少なくなかったと考えています。
可処分所得を増やす景気対策が必要
自公政権の経済政策によって景気は回復の方向に向かってはいるものの、国民の所得は長引くデフレによる減少から回復していません。また、来年度には“復興増税”による住民税、社会保険料引き上げによる負担増も重なり、可処分所得はかなり減少するものと考えます。したがって、消費増税は景気・雇用の腰折れを招く危険性があります。他方、増税見送りは、日本の財政に対する信認を低下させ、金利上昇等の悪影響を招く恐れがあります。難しい政治決断であることは先週も述べたとおりです。
私は、さまざまな要素を考慮したときに、消費税の予定通りの引上げはやむを得ないと考えます。しかし、景気・雇用への悪影響を緩和すために、経済対策を同時に実施する必要があると考えます。公共投資の増額等の対策では効果発現にタイムラグが生じます。中堅・低所得者の可処分所得を引上げる所得税や社会保険料などの負担軽減などが有効だと提案します。
(参考)四半期GDP成長率(対前期比) (%)
暦年 |
96年 |
97年 |
98年 |
||||||
四半期 |
Ⅳ |
Ⅰ |
Ⅱ |
Ⅲ |
Ⅳ |
Ⅰ |
Ⅱ |
Ⅲ |
Ⅳ |
成長率 |
1.6 |
1.3 |
▲2.0 |
0.9 |
▲0.6 |
▲1.2 |
▲0.2 |
▲1.2 |
▲0.5 |
*97年Ⅱ期に消費税率引上げ
*97年Ⅳ期に山一證券、北海道拓銀破たん