内閣は、来月初めにも来年4月から消費税率引上げの可否について最終的な決断を下す予定です。以前から述べてきたとおりさまざまな要素が絡みあった難しい政治判断であり、総理がいずれの判断を下したとしても、それを尊重し、サポートするつもりです。予定通りの引上げを決断した場合には、同時に景気に及ぼす影響を緩和するための対策パッケージを発表するものと承知しています。従来から主張してきたように十分な対策を講じる必要があります。
消費増税の影響に的確に対応した経済対策が必要
消費税率引上げを決断した場合に、対策として有効な施策についての考えを述べます。来年4月に消費税率が上がった場合に予想される影響は、
① 可処分所得の減少による消費の落込み、
② “駆込み”の反動減による需要の減少(特に住宅・自動車等)、
③ ①と②の結果、企業のマインドが冷え込み、投資が抑制される、
などです。加えて、昨年度補正予算による公共投資支出のピークアウトによる公需も減少します。これらの影響は短期的かつ限定的だとは思います。しかし、景気・雇用が未だ本格的な回復軌道に乗っていない現状では、これを契機に再び経済が縮小の悪循環に戻ってしまう危険性があります。取返しのつかない事態を回避するためには、的確かつ十分な対策が必要だと考えます。
可処分所得減少対策が必要
可処分所得の減少に対しては所得を直接補てんする、
① 低所得者に対して生活必需品に係る税負担増を相殺する給付、
② 中堅所得者を含め、所得税・住民税の軽減による所得補てん
などを2か年程度実施するのが有効でしょう。所得税・住民税に係る復興特別上乗せ分を停止することや所得税最低税率を5%から2~3%程度引下げることも考えられます。
消費増税の影響に対応する対策の提案
“駆込み”問題に対しては、
① 与党で合意済みの“住宅ローン減税拡充+給付制度”
② 自動車取得税の軽減等
需要を平準化する施策を行うべきです。
中小企業・小規模事業者の経営安定のための政策金融の拡充も事前に整備しておくべきです。また、企業の設備投資等を支援するための法人税の減税策等も必要です。その際には、設備の更新など投資意欲が見込まれる中堅企業を対象とした対策を考慮することが重要です。
公共投資も、効果発現が比較的早くかつニーズの高い都市インフラの防災対策などを中心に一定規模の財政出動も行うべきだと考えます。
これらの対策を策定するに当たっては、消費増税の目的が社会保障財源を確保することにあることを確認し、あくまで財政構造の悪化を招くような恒久的な支出増・収入減は避けるべきだと考えます。