消費税率8%への引上げにより重大な影響
連立政権による“三本の矢”の経済政策によって、日本経済には着実に好い流れが形成されています。しかし、本格的な経済再生にはまだまだ途半ばです。
今年の第一四半期(1-3月)のGDP成長率は、実質3.9%、名目9.4%(年率換算)と高い伸びを示し、経済は確実に改善しています。しかし、2014年度には4月の消費税率8%への引上げによって、個人消費が減少し、実質マイナス成長に陥るなど予想を超える悪影響を及ぼしました。
【2014年度の政府経済見通し(2014年1月)と実績の比較】
政府経済見通し | 実績 | |
実質GDP成長率 | 1.4% | ▲0.9% |
名目GDP成長率 | 3.3% | 1.6% |
民間最終消費支出増加率 | 0.4% | ▲3.1% |
消費者物価上昇率 | 3.2% | 2.7% |
先日、有名なエコノミストから意見を伺ったところ、雇用環境の改善により全体として所得は増加傾向にあるものの、低中堅所得者の賃金上昇が遅れていることや年金生活者の可処分所得が減少したために、個人消費が想定よりも大きく落込んだと分析していました。
再引上げ延期は正しい判断だった
連立政権では昨年末に、今年10月に予定されていた消費税率10%への再引上げを2017年4月まで延期することを決定しました。私はいち早く延期を主張しましたが、結果的に正しい判断であったことは明らかです。もし、予定通り4月に再引上げを行っていたら、日本経済は再び減速に向かっていた危険性がありました。
再引上げに備えた対策の準備が必要
足もとの経済情勢の改善を踏まえ、年金・医療・介護等の財政を安定させるとともに財政健全化目標を達成していくことが重大な課題であることから、再引上げを予定通り行うべきだとは考えます。しかし、昨年度の影響がかなり重大であったことを考えると、個人消費を喚起する十分な経済対策が必要です。税率引き上げの影響は来年後半からはじまりますので、来年度予算にも一部対策を盛込む必要があります。内閣・与党において早急に検討に着手していきたいと考えています。
所得拡大、軽減税率などの対策が効果的
現在、デフレから脱却しつつあり、物価は上昇傾向に転じています。さらに、消費税率再引上げによる物価上昇で消費支出を減少させる危険性があります。それを防ぐためには、賃金の引上げにより、物価上昇率に見合う所得の上昇を実現することです。実質賃金はようやく上昇に転じましたが、その動きを加速化するため「政労使会議」を通じた働きかけを一層強化していくべきだと考えます。
また、住宅や耐久消費財の駆込み/反動減を均すとともに、購買意欲を喚起する対策も検討していく必要があります。さらに、食料品などの税率引き上げを見送り“軽減税率制度”を導入することによって低中堅所得世帯の実質的な可処分所得を増加させることも効果が大きいと期待されます。対策の立案・実施に当たっては、経済効果に加えて消費者マインドをよく考慮したものとしていくことが肝要だと考えます。