【いさむの一言(5月22日)】組織犯罪処罰法等改正案など重要案件の議論が進む

85

 

通常国会が最終盤へ

 1月にはじまった通常国会の会期も残り1か月を切りました。関心の高い重要法案の議論も進んできました。天皇陛下の御退位の特例法案は、先週与党で了承し、閣議決定されました。また、衆議院の定数削減と一票の格差是正のための法案も国会に提出されました。

 それ以外にも各委員会に付託されている重要法案が数多くあります。これから国会が最終盤に入っていきますが、確実な成立をめざしてまいります。

 

組織犯罪処罰法等改正案が衆院を通過へ

 先週、法務委員会で、自民・公明・維新による修正を行った上で賛成多数で可決されました。この法案は、2000年に我が国も署名した「国際組織犯罪防止国連条約(TOC条約)」に定められた義務を履行するのに必要な国内法を整備するものです。TOC条約については、2003年に民主(当時)・共産を含むほとんどの政党が賛成して承認されましたが、国内法が整っていないために未だに締結できていません。現在、主要先進国を含む世界187か国が締結しており、我が国としても早期に締結することが求められています。以前にもたびたび法案が提出され、審議が行われてきましたが、成立に至っていません。今回、これまでの国会審議やマスコミ等で提起された懸念等に対応するため、与党で見直しを行い、今国会に再提出しました。私は、当時の法務総括政務次官としてTOC条約の策定に携わり、署名式にも出席しましたが、国際社会では条約の必要性を強く認識し、日本の締結が望まれています。

 以下、主な疑問に対する考え方を述べます。

○今、法整備を急ぐ理由は?

 最近、ヨーロッパやアメリカで凄惨なテロ事件が続発しています。2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けて、世界中の注目が日本に集まり、テロの標的とされる危険性が高まります。また、海外からの来訪者が増加し続けている中で、“国際マフィア”等による犯罪の恐れもあります。万一の事態を未然に防ぐために、各国の治安当局や国際機関とテロや組織犯罪に関する情報共有、捜査共助の必要性が高まっており、条約の早期締結が必要になっています。

○TOC条約はテロ対策を目的としたものではない?

 確かに、TOC条約は当時脅威が増大していた国際マフィア等による麻薬・武器の密輸、人身売買、犯罪収益の洗浄に国際社会が協力して対応することを目的として作成されました。しかし、今日ではイスラム過激派が犯罪収益をテロ資金に使っているように、テロと犯罪組織が明確に区別できなくなっているというのが世界の関係者の一般的な認識となっています。したがって、犯罪組織への対応を強化することがテロを未然に防ぐことに役立ちます。

○一般の企業・組合・市民団体等が処罰の対象になるのでは?

 処罰の対象となる団体は、テロ集団等の組織的犯罪集団、すなわちテロ組織、暴力団、薬物密売組織等に限定しています。これに該当しない一般の団体が対象になるものではありません。しかも、対象となる犯罪は、①テロ②薬物③人身売買・強制労働等④資金源⑤司法妨害の類型に該当する277の罪だけです。一般の団体がこうした犯罪の準備行為を行うことはおよそ想定されません。

○犯罪を実行しなくても内心や思想を理由に処罰されるのでは?

 処罰の対象となるのは、犯罪実行について合意するだけでなく、資金・物品の手配、下見等の準備行為があった場合だけです。その団体に所属するだけで処罰の対象となるものではありません。また当然ながら、現行の刑事法制で既に定められている罪だけが対象であり、いわゆる政治犯・思想犯を新たに追加するものではありません。