【いさむの一言(5月13日)】賃金上昇のための雇用の流動性向上

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雇用情勢は大きく改善

 いわゆる「アベノミクス」の金融・財政政策で、雇用情勢は大幅に改善しました。完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.63となり、この間女性や高齢者の就業者が300万人以上増えました。内閣からの働きかけもあり、賃金も上昇しています。労働組合の資料では、大企業中心に5年連続で2%以上のベースアップが達成されました。
 

人手不足でも賃金上昇は低水準

 しかし、“人手不足”が深刻になっているのに、賃金の上昇は低い水準にとどまっています。本格的な経済成長を軌道に乗せていくためには、賃金が安定的に上昇していく状況をつくり出す必要があります。これが「アベノミクス」の成否のカギだと考えます。
 

雇用システム変更についての議論が活発に

 経済学者や民間エコノミストは、賃金上昇が停滞している理由についてさまざまな解説をしています。
最近、多くの専門家が指摘しているのは、日本では労働法制や雇用慣行のため“雇用の流動性”の不足です。大企業や官公庁で広くとられている「メンバーシップ型」、すなわち先に人を採用してから仕事を割振るというシステムが、中堅層の給与上昇の妨げになっていることです。新卒一括採用、終身雇用、年功序列賃金体系といった日本型の仕組みが前提となっています。これを、欧米型の「ジョブ型」、すなわち仕事を決めてから人を充てるシステムに変えていこうという主張が増えています。ジョブ型・メンバーシップ型とは

これからの内閣の経済政策等の基本方針を議論する「経済財政諮問会議」でもこのテーマを取上げています。平成31年第5回経済財政諮問会議
 

「ジョブ型」システムへの移行には慎重な議論が必要

 現在広く行われている「メンバーシップ型」システムでは、経営サイドにとって、中堅層の人材流失の心配はそれほど大きくなく、処遇改善のインセンティブが低いのは事実です。「ジョブ型」システムが広がれば、技能や専門性の高い人材は、転職によるキャリアアップを通じて高い賃金を得ることができる可能性が高まります。
 しかし、官公庁・大企業の多くで雇用方針を変更しない限り、労働市場が適正に機能せずに、雇用環境が不安定化することが懸念されます。また、技能や専門性によって労働者間の格差が広がるものと予想されます。
産業構造や国際環境の変化など企業を取巻く情勢が激変する中で、「ジョブ型」システムへの見直しを検討していくことは、経営・労働双方の利益にとって重要です。しかし、デメリットについても慎重に検討し、漸進的に進めていく必要があると考えます。